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人材・SES業界の生成AI活用——CA/RA業務を変える4つの型【2026年版】

この記事でわかること

  • 人材業界の生成AI活用が「スカウト文の自動生成」で止まりやすい理由
  • CA/RAの時間が実際に溶けている場所と、そこを変える4つの型
  • 各型でそのままコピペして使える依頼文(プロンプト)
  • 職務経歴書や面談メモをAIに渡すときの、個人情報の線引き

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人材業界の生成AI活用は、なぜ「スカウト文」で止まるのか


帝国データバンクが2026年3月に全国23,349社を対象に実施した調査によると、生成AIを業務で「活用している」と回答した企業は34.5%でした。
そして活用している企業の86.7%が「業務への効果が出ている」と答えています。
使えば効果は出る、という段階まで来ています。

問題は、その中身です。
同じ調査で、活用している業務の第1位は「文章の作成・要約・校正」でした。

人材業界でこれを当てはめると、真っ先に手が伸びるのがスカウト文です。
文章で、量が多くて、テンプレート化しやすい。
入口としては自然な選択です。

ただ、ここで止まる会社が多いのも事実です。
スカウト文をAIに書かせても、返信率が劇的に変わるわけではありません。
むしろ「AIっぽい文章」が媒体に増えるほど、差はつかなくなります。

この記事ではスカウト文を扱いません

すでに多くの記事が書いていますし、そこは各社が自力で到達できる場所だからです。
この記事で扱うのは、スカウト文の手前と奥にある、もっと時間が溶けている業務です。

CA/RAの時間は、どこに溶けているのか


私たちは人材紹介・SESの現場に関わる中で、CA/RAの1日がどこで詰まるのかを見てきました。
意外に思われるかもしれませんが、時間が溶けているのは「書く」作業ではなく、「読んで、揃えて、言葉にする」作業です。

やっていること 実際に時間がかかる理由
職務経歴書を読む読むこと自体より、「この人の強みは何か」を提案先に合わせて言葉にするのに時間がかかる
面談メモを社内共有する自分は分かっているので、他人が読んで分かる形に直す作業が後回しになる
推薦理由を書く「スキルが合っています」から先が書けず、手が止まる
商談前に企業を調べるサイトを流し読みしても、採用背景の仮説までたどり着かない

どれも「文章を作る作業」ではありません。
情報を読み取って、意味を整理して、他人が使える形にする作業です。
生成AIが本来得意なのは、実はこちら側です。

CA/RA業務を変える4つの型


ここからは、そのままコピペして使える依頼文を4つ紹介します。
いずれも「①役割 ②前提・現状 ③課題 ④目指す状態 ⑤依頼 ⑥条件」の6項目で書いています。
この形にしておくと、あとから自社に合わせて書き換える場所がはっきりします。

型1|職務経歴書の要約と、強みの言語化

経歴書を読むこと自体はAIに任せなくてもできます。
難しいのは、同じ経歴を「提案先ごとに違う強み」として言い直すことです。
同じ人でも、SIerに出すときと事業会社に出すときでは、押す場所が変わります。

# ①役割
あなたは人材紹介会社のキャリアアドバイザーです。

# ②前提・現状
これから候補者の職務経歴書のテキストを貼り付けます。
提案先は〈業界・職種・企業規模〉の企業です。

# ③課題
経歴書をそのまま読んでも、その人の強みが
提案先の企業に伝わる言葉になっていません。

# ④目指す状態
企業への推薦文にそのまま使える形で、
強みが3つに整理されている状態。

# ⑤依頼
経歴を読み、提案先の企業から見た強みを3つに整理してください。
それぞれに、経歴書のどの記述が根拠かを添えてください。

# ⑥条件
- 経歴書に書かれていないことは推測して補わない
- 根拠が弱いものは「根拠が弱い」と明記する
- 1つあたり100字以内
- 「抜群の」「圧倒的な」などの誇張表現は使わない

【職務経歴書】
〈ここに貼り付け〉

重要なのは⑥の1行目です。
これを入れないと、AIは経歴書に書いていない強みを親切に補完してきます。
そのまま推薦文に使うと、面接で必ず崩れます。

型2|面談メモ → 議事録 → 社内共有

CAが面談で取ったメモは、たいてい本人にしか読めません。
本人は文脈を覚えているので困りませんが、RAがそれを見て求人を探すときに情報が足りません。
結果、口頭で聞き直すことになります。

# ①役割
あなたは人材紹介会社のキャリアアドバイザーです。

# ②前提・現状
候補者との面談で取った箇条書きのメモを貼り付けます。
社内では、企業担当(RA)がこのメモを見て求人を探します。

# ③課題
メモのままでは、RAが求人を探すために必要な情報が
どこにあるか分かりません。

# ④目指す状態
RAがメモを開いて30秒で「どの求人を当てるか」を
判断できる状態。

# ⑤依頼
以下の5項目に整理し直してください。
1. 転職理由(本音と建前が分かれていれば両方)
2. 譲れない条件
3. 妥協できる条件
4. 懸念点(選考離脱・内定辞退のリスク)
5. 次のアクション

# ⑥条件
- メモに書かれていない項目は「未確認」と書き、埋めない
- 候補者の発言で印象的な言い回しは、要約せず原文のまま残す
- 全体で400字以内

【面談メモ】
〈ここに貼り付け〉

「書かれていない項目は『未確認』と書き、埋めない」——議事録をAIに任せるとき、これが一番重要な1行です。
この指定がないと、AIは空欄を埋めようとして、聞いていないことをもっともらしく書きます。
逆にこの1行があると、「何を聞き漏らしたか」が可視化されるので、次の面談の質問設計にも使えます。

当社では、面談内容を社内共有できる形にするまでの時間を、30分から10分以下に短縮した実績があります。
テンプレートの整備で実現したことですが、今なら同じことをこの依頼文1つで再現できます。

型3|「なぜこの人なのか」の言語化

推薦理由が「スキルが合っています」で止まると、企業側は判断できません。
とはいえ、要件を全部満たしている候補者はほとんどいません。
実務で必要なのは、満たしていない部分をどう扱うかです。

# ①役割
あなたは人材紹介会社のキャリアアドバイザーです。

# ②前提・現状
求人票と、候補者の経歴要約を貼り付けます。

# ③課題
「スキルが合っています」以上の推薦理由が書けず、
企業側の検討が進みません。

# ④目指す状態
企業の採用担当者が、書類選考に進めるかどうかを
判断できる材料を持てる状態。

# ⑤依頼
この候補者を推薦する理由を、求人票の要件と
1対1で対応させて書いてください。
要件を満たしていない項目があればそれも書き、
補える根拠があれば添えてください。

# ⑥条件
- 満たしている要件と満たしていない要件を分けて書く
- 満たしていない要件を「問題ない」と言い換えない
- 推薦理由は5項目以内
- 求人票にない要件を勝手に想定しない

【求人票】
〈ここに貼り付け〉

【候補者の経歴要約】
〈ここに貼り付け〉

「満たしていない要件を『問題ない』と言い換えない」という条件が、この型の価値です。
AIは放っておくと、不足を前向きな言葉に変換します。
それをそのまま出すと、企業からの信頼を1回で失います。
不足を先に開示したうえで補足がある推薦のほうが、結果的に通ります。

型4|商談前の企業リサーチ

RAの初回商談は、事前準備の量で結果が変わります。
ただ、企業サイトを流し読みしただけでは「採用背景の仮説」まで届きません。
ここはWeb検索を使えるAIの得意分野です。

# ①役割
あなたは人材紹介会社の企業担当(RA)です。

# ②前提・現状
これから〈企業名〉と初回商談を行います。
Web検索を使って調べてください。

# ③課題
企業サイトを流し読みするだけでは、
採用背景の仮説が立ちません。

# ④目指す状態
商談の冒頭で「御社は今こういう状況ですよね」と
切り出せる状態。

# ⑤依頼
次の4点を調べ、それぞれ出典URLを添えてください。
1. 直近1年の事業上の動き(新拠点・新サービス・資金調達など)
2. 現在出している求人と、そこから読める組織の課題
3. 経営者・役員の発信(インタビュー記事など)
4. 上記から立てられる「採用背景の仮説」を2つ

# ⑥条件
- 出典URLのない情報は書かない
- 確認できなかった項目は「確認できず」と書く
- 事実と仮説を明確に分けて書く

先ほどの帝国データバンクの調査では、生成AIの懸念・課題の第1位は「情報の正確性」で50.4%でした。
この不安は、⑥の「出典URLのない情報は書かない」の1行でかなり減らせます。
出典が出てくれば確認できますし、出典が出せない項目はAI自身が「確認できず」と申告してきます。

なお、リサーチに向いているAIツールは種類によって差があります。
詳しくは検索・リサーチにおすすめのAIツール7選で整理しています。

型にすると何が変わるのか——新人の一人立ちが6ヶ月から3ヶ月に


4つの型を紹介してきましたが、本当の価値は1人あたりの時短ではありません。
チームで同じ型を使うと、ベテランの判断が文章として外に出ます。

新人が育たない会社では、たいてい「見て覚えろ」になっています。
ベテランが何を見て推薦を決めているかが、本人の頭の中にしかないからです。
型は、その頭の中を強制的に言葉にします。

当社では、新人が一人立ちするまでの期間を平均6ヶ月から3ヶ月に短縮した実績があります。
やったことは、ベテランの判断基準を項目に落として、新人がそれを埋めるところから始められるようにしただけです。

正直に書いておきます

これはAIで実現したことではありません。
型を作る作業そのものに、何ヶ月もかかりました。
ベテランに何度もヒアリングして、項目を書き出して、使ってもらって直す——その繰り返しです。
いま生成AIを使う価値は、この「型を作る側」の工数が大きく減ることにあります。
実際の面談メモを10件ほどAIに渡して「共通して見ている観点を抽出して」と頼めば、たたき台は当日中に出ます。

どこから始めるか——1つだけ選ぶなら型2


4つ全部を同時に始めると、たいてい全部中途半端になります。
最初に取り組むなら、型2(面談メモの整理)をおすすめします。

理由 内容
毎日発生する面談は毎日ある。回数が多いほど、型の良し悪しが早く分かる
失敗コストが低い成果物が社内向けなので、品質が荒くても社外に迷惑がかからない
効果が数字で見える共有までにかかった時間を測れば、導入前後の差がすぐ出る

2週間ほど回してみて、RAから「求人を探しやすくなった」という反応が出れば成功です。
そこまで来てから、型1や型3に広げてください。

注意点——職務経歴書と面談メモは個人情報です


ここまで紹介した型は、どれも候補者の個人情報をAIに渡すことになります。
人材業界にとって、ここは避けて通れない論点です。

最低限、次の3点は社内で決めてから始めてください。

1. 使うAIのプランを決める(法人向けプランかどうかで、入力データの扱いが変わります)

2. 貼り付ける前に、氏名・生年月日・連絡先・現職の社名を伏せる運用にする

3. 誰がどのツールを使ってよいかを一覧にして、全員が見られる場所に置く

特に2番目は、型1と型2を使う前に必ず決めてください。
経歴書の本文は伏せなくても成立しますが、氏名と現職の社名が入ったまま渡す必要はありません。
入力データの扱いやプランごとの違いは、会社で使う前に知る生成AIセキュリティ超入門で詳しく整理しています。

まとめ


人材業界の生成AI活用は、スカウト文から入って、スカウト文で止まりがちです。
実際に時間が溶けているのは、読んで、揃えて、言葉にする工程でした。

いちばん重要な条件(⑥)
型1 強みの言語化経歴書に書かれていないことは推測して補わない
型2 面談メモの整理書かれていない項目は「未確認」と書き、埋めない
型3 推薦理由満たしていない要件を「問題ない」と言い換えない
型4 企業リサーチ出典URLのない情報は書かない

並べてみると、4つとも「AIに黙らせる条件」であることが分かります。
生成AIは、空欄を埋めて、前向きに言い換えて、それらしく補完するのが得意です。
人材業界の実務では、その親切さがそのままリスクになります。
だから型のうち半分は、やらせないことを書くために使います。

よくある質問(FAQ)


Q. スカウト文の自動生成は、やらないほうがいいのですか?
A. やってはいけないという話ではありません。
ただ、他社も同じことをするため差がつきにくく、返信率という結果につながりにくい領域です。
先に社内の工程(型2・型3)を整えたほうが、投下した時間に対する変化が大きくなります。

Q. 職務経歴書や面談メモをAIに貼り付けても大丈夫ですか?
A. 使うプランと運用ルール次第です。
氏名・連絡先・現職の社名を伏せる運用にしたうえで、入力データが学習に使われない設定・プランかどうかを確認してから始めてください。
この確認を飛ばしたまま現場が使い始めるのが、いちばん危険な状態です。

Q. 無料のAIでもできますか?
A. 4つの型そのものは、無料のツールでも動きます。
ただし個人情報を扱う以上、入力データの扱いを選べる法人向けプランを推奨します。
まず型2を無料版のダミーデータで試して、手応えを確認してから有料に切り替える進め方が現実的です。

Q. 現場のCAが使ってくれるか不安です。
A. 「AIを使ってください」と伝えると、たいてい定着しません。
依頼文を配って「面談メモはこれを貼るだけ」という状態にすると、使う理由を考えなくて済みます。
1つの業務・1つの依頼文から始めるのが、いちばん失敗が少ないやり方です。

Q. 自社の業務に合わせて型を作りたい場合はどうすればいいですか?
A. 既存の面談メモや推薦文を10件ほど集めて、「共通して見ている観点を抽出して」とAIに頼むところから始められます。
自社だけで進めにくい場合は、伴走型AIコンサルとは?も参考にしてください。

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出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(調査期間 2026年3月17日〜31日/有効回答 23,349社)

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